不眠の子守唄

読書・音楽・歴史・美術館などの趣味について。最近は書評が多め。夜中に更新することが多いです。

主人公・ムルソーは「サイコパス」? それとも「正直者」?ー不条理文学の金字塔・カミュ『異邦人』考察

ボーガンによる殺人事件というニュースを見た。亡くなられた方のご冥福をお祈りする。

不謹慎ながら、私がボーガンと聞いて思い出すのは、ドラマ『相棒』Season1 第5話「目撃者」という話である。

小学校周辺で起きたボーガンによる殺人事件を題材とした話なのだが、非常に印象深い登場人物が登場する。子役時代の染谷将太演じる小学生・手塚守という人物である。

 

彼は『相棒』シリーズの中でも最年少に近い証人なのではないかと思うが、非常にませている小学生なのである。

特に印象的なのは、カミュの小説『異邦人』の主人公・ムルソーはどのような人物だと思うか? と亀山たちに問うシーンである。

 

手塚守は、「主人公は正直者だと思う」と答える。――この読みは、私は全く正鵠を射た指摘であると思う。

今回は、この『異邦人』について書いてみたい。

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三島由紀夫『美しい星』あらすじ・考察ー突如「宇宙人として目覚めた」家族を描く三島ワールド

三島由紀夫『美しい星』という作品がある。

三島作品としては異色なSF的作品であり、「変わった作品」とみられることが多い。

 

しかし、私は三島作品の中でこの作品が一番好きかもしれない。それはこの小説が、私の初めて読んだ三島作品だからでもあるのだが、三島はこの作品で「SF」という道具を用いて、現代社会に対して非常に多くの示唆をしているのではないかと思うからである。

  • 『美しい星』あらすじ
  • 「宇宙人」として人間にどう接するか
  • 『美しい星』の結末の考察
    • 結末の解釈
    • 「地球を去る」宇宙人
    • 「宇宙人」としての三島
  • 三島文学の神髄
  • おわりに 

美しい星 (新潮文庫)

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悲惨な出来事に際し、文学作品の持つ意味を考えるー上岡伸雄『テロと文学 9.11後のアメリカと世界』書評・感想

新型コロナウイルスの感染拡大はなお予断を許さないが、日本では収束に向かいつつあると言っていいだろう。

このウイルスは、1万人規模の人々の死という意味での大きな悲劇は、日本にもたらさなかったと評価していいのかもしれない。しかし、実際の犠牲者の数に比べ、医療従事者の抱えるストレスをはじめとした諸問題は間違いなく大きな「悲劇」だと評価できるだろう。

このような出来事を目の当たりにして私が感じたのは、「悲劇」というものが今後どのように人々に受容されていくのだろうか、ということである。そのような中で、ちょうど本屋で目についた「悲劇と文学」を読み解いた本である上岡伸雄『テロと文学 9.11後のアメリカと世界』集英社新書を、手に取ってみた。

テロと文学 9.11後のアメリカと世界 (集英社新書)

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『らんま1/2』で天童あかねはどうして泳げないのか?

最近サンデーうぇぶりというアプリで、高橋留美子の超名作『らんま1/2』を読み直していたのだが、どうでもいいことに気づいたのでここに書く。

 

らんま1/2』を読んだ方はご存知のように、ヒロイン・天童あかねは、カナヅチなのである。

しかし、天童あかねは運動神経万能なのにどうして泳げないのか、私はこの設定にずっと疑問を持っていた。――しかし、これは伏線ではないかと読んでいて気づいたのである。

  • はじめに
  • あかねと呪泉郷
  • 呪泉郷の謎
  • おわりに

#107 あかね、涙の水泳大特訓

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『信長公記』で戦国大河ドラマの復習をするー「麒麟が来る」を観て思う

大河ドラマ麒麟が来る』を観ている。録画して見ているので若干流れに乗り遅れている感があるが、長良川の戦いで斎藤道三が高政(義龍)に討たれるのをようやく見終わったところである。

 

ところで大河ドラマの楽しみ方は色々あると思うが、私はいつも大河ドラマを、史実(ないし逸話)をどのように潤色して物語を作り上げているのだろうか? という観点から楽しんでいる。これは今回の『麒麟が来る』以外の大河ドラマにも言えることである。

そのような「どこを潤色しているのだろう?」という発見を楽しむことは、その話の元となった史実や逸話を読むことによって可能になる。

戦国大河を観る場合に、そのような本としておすすめなのは『信長公記』である。この記事では『信長公記』について紹介し、またこのような大河ドラマの楽しみ方についても提示したい。

NHK大河ドラマ「麒麟がくる」オリジナル・サウンドトラック Vol.1

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大学院生が、水月昭道『高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院』を読んで自戒する

私は現在、文系の大学院修士課程の学生であるが、なかなか厳しい道であることを自覚している。

そうというのも、一般に文系で修士・博士まで進んだ学生というものは、一部が大学教授の職を得られるほかは、社会的栄達と全く無縁の生涯を送ることになるからである。自殺率も非常に高まることが知られている。

文系よりは多少ましだと思うが、研究職を目指すならば理系でも同じことである。

――私も大学院卒になってまで「ワーキングプア」にはなりたくないが、そうなる可能性が非常に高いのが現状である。

 

そのようなわけで、自戒を込めて水月昭道『高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院』光文社新書)を読んだ。

この本は2007年の本であるが、2020年5月に同著者の『「高学歴ワーキングプア」からの脱出』が発売されているのを記念して、ちょうど光文社新書のnoteで公開されているのを機に拝読させていただいたので、感想を記したい。

  • 大学院をめぐる構造的問題 
  • 大学院進学は「自己責任」か?
    • 「弱小大学院」の悲哀
    • 生きていくための諦観
  • おわりに

高学歴ワーキングプア  「フリーター生産工場」としての大学院 (光文社新書)

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『ストップ!! ひばりくん!』のアニメの評価は? ー全話感想・原作と徹底比較!

私の一番好きなマンガの一つは江口寿史さんの『ストップ!!ひばりくん!』という作品で、このマンガに関しては、このブログでも今まで二回も記事を書いている。

ここ数日「ひばりくん」の検索が増えていて、なんでだろう? と思っていたところだったが、5月20日が「ひばりくん」のアニメの放映開始日だったことに気づいた。

 

――というわけで、今回はアニメ「ストップ! ひばりくん!!」について紹介します!!

ストップ!!ひばりくん!コンプリート・エディション 第1巻

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