不眠の子守唄

書評ブログ。たまに洋楽。読書は海外文学、音楽は洋楽多め。不定期更新

スピルバーグ『シンドラーのリスト』が傑作である理由【あらすじ・感想】

大学に入ってから、戦争映画だけはちゃんと観ようと思い立ち、以来観る映画の半分以上が戦争映画になった。 純粋なドキュメンタリーも観るが、実話をもとにしたフィクションも観る。中でも印象的だったのは、スティーヴン・スピルバーグ監督の『シンドラーの…

ジョージ・オーウェル『動物農場』あらすじ・考察ー歴史は繰り返すのか?

ジョージ・オーウェルと言えば監視社会を描いた『一九八四年』が有名だが、オーウェルの出世作である『動物農場』も代表作として知られている。 『動物農場』(Animal Farm)は、副題が「おとぎばなし」(A Fairy Story)であるように、動物たちを主人公とし…

鬼殺隊の最終選別はどう考えてもおかしいー『鬼滅の刃』考察

空前のブームとなっている『鬼滅の刃』。私も読みましたが、非常によくできた作品だと思います。原作だけからではここまで流行るとは全く予測できませんでしたが、アニメの出来もいいですし、ここ数年で断トツのコンテンツというのは肯けます。 ただ、読み終…

久米田康治『かくしごと』は、漫画家を題材にした最高の日常系ギャグマンガである

2020年にアニメ化もされた久米田康治の『かくしごと』は、漫画家を題材にした最高の日常系ギャグマンガだと思う。 漫画家を題材にしたマンガというと、高校生が連載獲得を目指すところからスタートする『バクマン。』(原作・大場つぐみ、作画・小畑健)や、…

衝撃的で深甚なゲイ小説―三島由紀夫『禁色』あらすじ・感想

今月25日で三島由紀夫の没後50年である。 三島由紀夫といえば「同性愛」のイメージがつきまとうが、その中でも『禁色』(きんじき)という作品は、同性愛をテーマにしながらエンターテイメント的にも非常に面白い作品である。 同性愛をテーマにした小説で、…

【名盤ランキング】デヴィッド・ボウイのおすすめアルバム10選

そろそろデヴィッド・ボウイが死去して5年経つ。 私より若い世代になると、デヴィッド・ボウイを聴く人はだいぶ少なくなるんだろうなと思う。そもそも私の周囲にもデヴィッド・ボウイを聴く人は残念ながらほとんどいない。 でも、私はデヴィッド・ボウイのア…

岩明均『寄生獣』ラストの考察ー人間として生きる覚悟

岩明均の『寄生獣』というマンガがある。 無駄のない構成を持つ面白いマンガであり、さらに人間に寄生して体を乗っ取り人間を食べるという「寄生生物」の恐怖をテーマに据え、人間とは何かという問題、あるいは環境問題に踏み込んだ、多くのテーマを孕み哲学…

【ランキング】ブリットポップの名盤20選

1990年代のイギリスは、「イギリス的」な音楽が盛んになった時代で、オアシス、ブラーに代表される数々のバンドが興隆した。この一大ムーブメントは「ブリットポップ」と呼ばれるが、私はこの時期の音楽を愛している。 というわけで、今回はブリットポップの…

星新一の作品を大人にこそおすすめしたい理由【ショートショートの神様】

僕の中学時代の読書体験の80%は星新一で出来ていると言ってよい。 しかし、中学から高校に入ると、僕は星新一を「卒業」してしまった。 それは、一つには星新一作品をほぼ読みつくしたからであるが、もう一つには高校生になって星新一を読んでいるのはダサい…

とてつもない難解さゆえの中毒性―フォークナー『響きと怒り』あらすじ・感想

読んでいて、あまりに理解が追い付かなくて笑ってしまった小説がある。 「こんなのわからねーよ!」と、読んでいながらツッコんでしまうのである。 その作品こそ、ノーベル文学賞作家ウィリアム・フォークナーの代表作『響きと怒り』である。だが、もちろん…

絶対に手に入れられない虚しさ―トルーマン・カポーティ『ティファニーで朝食を』あらすじ・考察

トルーマン・カポーティの『冷血』を読んだらめちゃくちゃ面白かったので、カポーティの代表作『ティファニーで朝食を』を読み返してみた。 (『冷血』についてはこちらの記事で書いた) 『ティファニーで朝食を』は、映画だとどのような評価になるのかはわ…

【UKロック最強バンド】オアシス(Oasis)全アルバムおすすめランキング

最近自分の中で洋楽熱が再燃している。 洋楽と言っても僕が聴くのはほとんどイギリスのロックなのだが...... というわけで、このブログでも洋楽について書く頻度が上がるかもしれない。 今回書きたいのは、1990年代のイギリスでブリットポップを牽引したオア…

SF×第二次世界大戦のポストモダン―カート・ヴォネガット『スローターハウス5』感想・考察

こういうと語弊を招くが、私は戦争文学が好きである。 戦争は絶対に繰り返してはいけないと思っているし、体験したくもない。 しかし、だからこそ戦争に巻き込まれた人々の記憶は継承されるべきであると考えているし、文学作品に描かれた戦争に巻き込まれた…

死にたくても死ねない弱さを描く名曲―There is a Light That Never Goes Out(The Smiths)

またミュージシャンの訃報があった。 死を選ぶミュージシャンは昔から多い。 「死にたい」という気持ちは、共感可能である。むしろ、非常によくわかる。 だけど、ほんとうに死んでしまった人については、憧れることはできても共感することは不可能である。私…

岩明均『雪の峠・剣の舞』こそ、戦国マニアが選ぶ最高の歴史マンガである

僕はいわゆる戦国マニアなのだが、戦国マニアとして一番推したいマンガが、岩明均の『雪の峠・剣の舞』である。 岩明均というと一番の代表作は『寄生獣』だが、『ヒストリエ』などの作品に見られるように歴史への造詣が非常に高い。 (寄生獣にも「ギョエ~…

デカダン系の文学的歌詞ージャーヴィス・コッカーは史上最高の作詞家である

日本のミュージシャンで史上最高の作詞家は誰かという議論は他の人に任せるとして、洋楽、特にイギリスで私が一番好きな作詞家は、ジャービス・コッカーというミュージシャンである。 今の日本での知名度はほとんどないだろうが、1990年代のイギリスを席巻し…

プライムデーにKindle Paperwhiteを買って、本やマンガを読んでみた率直な感想

新型コロナウイルスの影響で開催が延期されていたAmazon Primeデーで、ようやくKindle Paperwhite(キンドルペーパーホワイト)を買いました! 私はもともとスマホのKindleアプリで電子書籍を読んでいたのですが、スマホの容量を圧迫しすぎて困っていました…

つまらないのに、印象に残る不思議な作品―フランツ・カフカ『城』あらすじ・感想

海外文学の名作と言われるものは、確かに難解なものは多いけれど、たいていどこか興奮できるような箇所があるものである。 でも、率直に「つまらない」と思った作品もあった。 私の中でのその代表が、フランツ・カフカの『城』である。 この作品を読んでいる…

ミラン・クンデラをはじめて読むならこの一冊ー『冗談』あらすじ・感想

ミラン・クンデラが2020年のフランツ・カフカ賞を受賞したらしい。フランツ・カフカ賞というのは、2006年に村上春樹が受賞したことで日本でもよく知られるようになった、チェコの文学賞である。 クンデラといえば、『存在の耐えられない軽さ』があまりに有名…

殺人犯の心理に迫るノンフィクション・ノベルートルーマン・カポーティ『冷血』あらすじ・考察

トルーマン・カポーティというと奔放な女性を描いた『ティファニーで朝食を』のイメージが強いが、ノンフィクション・ノベルという分野を開拓した小説家でもある。カポーティが「ノンフィクション・ノベル」という境地を開いた作品こそ、この『冷血』("In C…

アーサー・C・クラーク『幼年期の終わり』あらすじ・感想ー主人公は地球人なのか? 宇宙人なのか?

アーサー・C・クラークの『幼年期の終わり』という作品がある。 作者アーサー・C・クラークは、映画『2001年宇宙の旅』の原作者としても知られているSFの大家で、代表作である『幼年期の終わり』もSFの古典として知られている。 この作品を初めて読んだのは…

ノベライズ不能の超展開ー藤本タツキ『チェンソーマン』は、人生で最狂のマンガかもしれない

ここ10年くらい週刊誌なんて買っていなかったが、最近10年ぶりに週刊少年ジャンプを買っている。 鬼才・藤本タツキによる『チェンソーマン』というマンガがあまりに急展開過ぎて、単行本を待つことができなくなったからである。日々Twitterなどで断片的なネ…

人間の堕落を耽美的に描いた名作ーオスカー・ワイルド『ドリアン・グレイの肖像』あらすじ・感想

私が海外小説を好んで読み、イギリスの音楽を好んで聴いている原点はオスカー・ワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』かもしれない。 私はこの作品に中学校の頃に出会ったが(学校の図書委員会の会誌などで紹介されていた気がするが...... よく思い出せない…

ロシア文学入門! 甘酸っぱいようで衝撃的な恋愛小説ーツルゲーネフ『はつ恋』あらすじ・感想

ロシア文学と言えばドストエフスキーとトルストイの二大巨頭があまりに有名だが、この二大巨頭の作品を読むのはあまりに骨が折れる。 ーーそんなイメージでロシア文学を敬遠している人も多いかもしれない。 だが、ドストエフスキー作品と対極に属すような、…

連載作品だけじゃない! 高橋留美子の短編集おすすめランキング【高橋留美子劇場】

1970年代後半~80年代の『うる星やつら』・『めぞん一刻』に始まり、90年代の『らんま1/2』、2000年代の『犬夜叉』、2010年代の『境界のRINNE』、そして2020年現在連載中の『MAO』と、連載作品すべてがヒット作品という生ける伝説・高橋留美子。 しかし、ど…

「毒親」を描いた珠玉の短編集 萩尾望都『イグアナの娘』【あらすじ・感想】

昨今、「毒親」などという言葉に代表されるように、いびつな家族・親子関係がクローズアップされることが多いように思う。 子供を愛せない親、愛さずに育ったことによる愛着障害、そして愛されなかった子供が親になっても愛し方がわからないという問題......…

高橋留美子『めぞん一刻』を不朽の名作たらしめているものは何か?【あらすじ・考察】

親戚の影響で「マンガと言えばあだち充・高橋留美子」という環境で生まれ育った。 この小学館を代表する二大巨頭の作品はどれも読んだが、小学生の時分あまり記憶に残らなかったのが、高橋留美子の『めぞん一刻』だった。 まあ、小学生が読んで面白さがわか…

『読んでいない本について堂々と語る方法』書評・感想ーすべての読書人にお薦めできる一冊

ピエール・バイヤール『読んでいない本について堂々と語る方法』という本がある。 最初この本を書店で見た時、「変なハウツー本が出てる......」と少し軽蔑した目で見てしまったのだが、一方で、この本に対しての興味を抑えられなかったのも事実であった。 …

青木健『ペルシア帝国』(講談社現代新書)書評・感想ー遥かなる古代帝国を軽妙に描いた名著

最近読んだ新書の中で面白かったのが、青木健氏による講談社現代新書の『ペルシア帝国』である。 軽妙にして深遠、今年の世界史ジャンルの新書では今のところ一番面白いかもしれない。ということで、今回はこの本について紹介をしたい。 本書が描く対象 アケ…

ナボコフ『ロリータ』を読んでみて、この本に対しての誤解に気づいた―『ロリータ』あらすじ・感想

いわゆる「ロリコン」や「ロリキャラ」あるいは「ゴスロリ」「ロリータファッション」などの「ロリ」というのは、ロシア出身のアメリカの作家ウラジーミル・ナボコフの小説『ロリータ』に登場する少女ドロレス・ヘイズの愛称「ロリータ」に由来している。 「…