不眠の子守唄

書評ブログ。たまに本以外も。読書は海外文学、音楽は洋楽多め。不定期更新

古典的名作

「優しすぎる父親」は孤独死してしまう運命にあるのか?ー『ゴリオ爺さん』あらすじ・感想

老人ホーム(宿泊ありのデイサービス)でボランティアをしたことがある。 実の子どもたちもほとんど世話をしに来てくれないようなお年寄りを目の当たりにして、心が痛んだ。ーーそのようなお年寄りの方々も、若いときは人並み以上に子どもに愛情と金銭を注い…

きっと探していた名文に出会えるーリルケ『マルテの手記』感想・考察

ライナー・マリア・リルケの『マルテの手記』は、長編小説というよりは詩である。 作家志望だけど売れない青年の、悩みと回想をひたすらに吐露したような作品で、ストーリー性はない。 しかし、ストーリー性がないからといって、その作品が面白くないわけで…

アメリカの国民的小説! ハーパー・リー『To Kill a Mockingbird(アラバマ物語)』を読む【あらすじ・感想】

20世紀に書かれた最高の英米文学は? というランキングで、たいてい上位に君臨するのは、『ユリシーズ』とか『怒りの葡萄』など日本でも馴染み深い本である。 だが、アメリカ人がこのようなランキングを作成すると、たいてい上位に『To Kill A Mockingbird』…

シャーロット・ブロンテ『ジェーン・エア』あらすじー「自立した女性」ジェーンの行動原理とは

古典的名作であるシャーロット・ブロンテ『ジェーン・エア』のあらすじについて記す。書評・考察については別記事にまとめているので、そちらを見ていただきたい。 (なお岩波文庫・光文社古典新訳文庫での表記はジェイン・エアだが、この記事ではジェーンに…

内田百閒『百鬼園随筆』はここが面白い!

現代作家で誰の文章が好きかと聞かれたら、森見登美彦と答える。 森見登美彦の文体はやや古風なところがあり、面白いし独特なリズム感が大好きな作家である。そんな森見登美彦の文体に大きな影響を与えたのは、内田百閒だという(出典:作家の読書道:第65回…

「ハードボイルド小説とは何か?」を確立した名作ーレイモンド・チャンドラー『ロング・グッドバイ』感想

ハードボイルド小説とは何か? この問いに最も的確に答えてくれる作品は、レイモンド・チャンドラー『ロング・グッドバイ』(村上春樹訳。清水俊二氏による旧訳では『長いお別れ』)なのではないかと思う。 私は特にハードボイルド小説を愛好しているという…

シャーロット・ブロンテ『ジェーン・エア』考察ー描いているのは、「女性の自立」か「弱者の差別」か?

ジェーン・エアといえば、古典的・典型的なシンデレラ・ストーリーと思われている人も多いだろう。 それは一面では誤りではないのだろうが、この古典的名作をそのように表層的にしか読まないというのには個人的には反対である。『ジェーン・エア』は、作品が…

死ぬまでに読みたい海外文学の名作100選

海外文学が好きだ。他国の歴史や文化を感じることができるからだ。そして、なんといっても海外文学を読んでいると、文学批評から歴史まで、いろいろな知識がつながるのが良い。教養人になった気分になるし、実際けっこう教養が身についているんじゃないかと…

ジョージ・オーウェル『1984年』考察ー二重思考を信じ込まされる馬鹿になってはいけない

20世紀に書かれた最高のイギリス文学は? というランキングで、たいてい1位に君臨するのが、このジョージ・オーウェル『一九八四年』である。 この作品は、いわゆる「ディストピア小説」である。その後のディストピア小説に大きな影響を与えたのはもちろん、…

歴代ノーベル文学賞受賞者と、受賞理由まとめ【1901年~2020年】

表題の通り、ノーベル文学賞受賞作家についてまとめてみました。 ノーベル賞120年の歴史はあまりに長いので、のんびり見たり流し読みしながら見てください。 「ノーベル文学賞受賞作家は(入手できる限り)全員読む」のをライフワークにしたいのだが、どれく…

ガルシア・マルケス『百年の孤独』で海外文学の陶酔に浸るーラテンアメリカの熱情と魔術的幻想の神話

ガブリエル・ガルシア・マルケス「百年の孤独」という作品がある。同名の酒の元ネタである(多分)。 この作品は、「20世紀の傑作」ランキングなどでたいてい上位にランクインする作品(特に新潮社のランキングでは第一位にランキングしている)であり、その…

カート・ヴォネガット『猫のゆりかご』あらすじ・感想ー描く世界に「真実はいっさいない」のか?

カート・ヴォネガット「猫のゆりかご」について感想を記す。 この「猫のゆりかご」を一読した当初は、正直なところあまりよくわからなかったと記憶している。だが、先日「タイタンの妖女」の感想を記したのをきっかけに再読し、この作品についてもだんだん理…

カート・ヴォネガット『タイタンの妖女』感想・考察ーなぜ、人類は「タイタン」へ行ったのか?

カート・ヴォネガット「タイタンの妖女」といえば、アメリカのSFの最高傑作のひとつともされる作品である。爆笑問題・太田光の最も愛する作品の一つとしても知られている。 1959年の作品ということもあって、古さを感じる場面は多くある。しかし、今でもSFの…

カート・ヴォネガット『タイタンの妖女』あらすじー人類の究極目的と自由意志とは何か?

「タイタンの妖女」あらすじ 記事が長くなりすぎたので、あらすじを別に分けます。 ネタバレありですが、登場人物を絞ったプロットを書いています。 ▼普通の感想はこちらから moriishi-s.hatenablog.com

新型コロナウイルスからの隠遁生活を送るなら『デカメロン』を読もう

新型コロナウイルスの蔓延がいよいよ看過できない問題となってきた。 休日も家に籠もることを余儀なくされている人は多々いるだろう。 しかし、暇を持て余すからといって、悲観することではない。いまどきAmazon Prime Videoとか、Netflixとか、暇つぶしのた…

ガルシア・マルケス『予告された殺人の記録』登場人物まとめ

中南米の文学は、しばしば登場人物の名前への馴染みのなさゆえに読解に難儀する。 このガルシア・マルケスの傑作とて、例外ではない。 私自身の便宜も兼ねて読解の助けとするために登場人物をまとめたので、適宜読書の助けとしていただければ幸いである。な…

緻密な悲劇的ミステリー ガルシア・マルケス『予告された殺人の記録』あらすじ・感想

「予告された殺人の記録」は、1982年のノーベル文学賞受賞作家、ガルシア・マルケスの中編である。ガルシア・マルケスといえば『百年の孤独』の存在感が強すぎるが、この作品は作者自身が最高傑作と述べているほど、緻密に組まれた名作である。今回は、この…

中国古典は面白い! 幽玄の中華ファンタジー『聊斎志異』の魅力

漢文が嫌いな人は多いらしい。きっと中学・高校の漢文の授業がつまらなかった、という人が多いのだろう。 だが、中国の古典にはものすごく面白いものも多いと私は思っている。 その最たる例が、この「聊斎志異」である。今回は、もし読者の方が漢文にネガテ…

「耽美主義」を知りたければ、ワイルド『サロメ』を読んでほしい【あらすじ・感想】

オスカー・ワイルドという人物は、なぜだかサブカルチャーの世界で何か熱狂的な支持を集めている人物である。その魅力を知るために一冊を選ぶとしたら、私はこの「サロメ」を選ぶ。というのも、この作品こそが短いながら耽美的なワイルドの世界をよくあらわ…

遠藤周作『海と毒薬』あらすじ・感想ー世界を麻痺させる「毒薬」とは何か考察するー

「僕のヒーローアカデミア」(「ヒロアカ」)が最近(2020年2月)炎上し、週刊少年ジャンプ編集部が謝罪文を出すまでになった。さまざまな流言が流布しているが、文学好きとして思い出すのは遠藤周作「海と毒薬」だろう。作者遠藤周作は、この作品を通じて何…

コスパ最強の読書は「古典的作品」を読むことである理由

すべての読書人には、何かしらの読書の方向性を持っているだろう。 この方向性は十人十色である。 全く他人に強制する気はないし、理解されなくても良いが、私は基本的に「古典」と呼ばれる本に価値を見出し、そのような本をできる限り多く読むことを目標と…