不眠の子守唄

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【中高生向け】文学部卒大学院生が教える、読書感想文の攻略法ーテーマの決め方

そろそろ夏休みということで、今回は読書感想文の書き方について書いていきたい。

私の個人的な感想かもしれないが、「読書感想文の書き方」というものはあまり学校で習わないように思う。だが、私は読書感想文には攻略法があると思っている。

ただし「攻略法」といっても小手先のテクニックではなくて、優れた読書感想文を書くための突破口がいくつかあるということを述べておきたいのである。

――その突破口というのは、テーマの決め方である。 

 

今回は、例を挙げながら、読書感想文のテーマの決め方の例について書いていきたい。

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「読書感想文」のテーマの決め方

いきなり本題に入ろう。

「読書感想文 書き方」で検索するとよくヒットするページには、読書感想文は「本を読んで面白かったところ・感動したところを書きましょう」とある。

だが、正直に言うと本を読んでも感動しないから、読書感想文を書くのは難しいのではないか。

——私もけっこう、本を読んで表現の美しさや結末の鮮やかさに感動することはあっても、「読書感想文」にできるような感想は思いつかないということが多かった。

 

はっきり言おう。読書感想文を書くのに、感動する必要はない

 

読書感想文で書くのは「つまらない」「胸糞悪い」という負の感情でもいいし、あるいはまったく心を動かされなくても読書感想文は書けるのである。

 

だが、読書感想文を書くためには、何かしらのテーマが必要であるということである。

その一つのテーマを突破口として、読書感想文を書けばよい。

以下に、「テーマの決め方」を紹介するので、参考にしていただけたら幸いである。

 

特定の登場人物の行動について考察する

王道の書き方として、一人の登場人物の行動に着目するという方法がある。 

特定の人物の行動について、あれこれ批評すればいいのである。

 

――もちろん特定の人物の行動に「感動した」なら、それについて書いても良いが、先ほども言ったように、このような登場人物の行動に感動する必要はないのである。

「腹立たしい」と感じたら、「腹立たしい」と書けばよい「理解できない」と感じたら、「理解できない」と書けばよい。

おそらく、その方が読書感想文も書きやすいのではないかと思う。

 

もしこのような書き方をして先生に怒られたとしても当ブログは一切の責任を負わないが、そんなことで怒る先生は所詮は能がないだろうから気にしないことである。

例:カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』 

例えば、このブログで過去に紹介した本として、ノーベル文学賞作家であるカズオ・イシグロ『わたしを離さないで』という作品がある。この本は色々な示唆にも富み、美しくも哀しい名作であることに疑いの余地はないのだが、私には一つの疑問が読後に残った。

詳しくは記事に書いたが、主人公たちの行動が疑問だったのである。

だったら、それをテーマにして読書感想文を書くことができる。自分の体験も交えながら、このような流れで読書感想文を書いていけばよい。

私は、この作品の中で主人公たちが結果的に「死を受け入れる」という決断を下したことを不思議に思いました。私が彼女たちの立場にあったら、別の行動を起こすと思ったからです。……著者のカズオ・イシグロは、このような主人公たちの性質を、私たちとは違う性質として描きたかったのかもしれないと思いました。

ちなみによく読書感想文にあらすじを書く必要はないというが、実際に解く諸感想文にあらすじを書く必要はない。上に書いた例のように、「この作品の中で……なところについて……と思いました。」とピックアップする程度でよい(もちろん先生に指導方針があれば、従うのが良い)。

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例:バルザックゴリオ爺さん

フランスを代表する作家・バルザック『ゴリオ爺さん』には、実父から金をとれるだけとって見捨てる娘が登場するが、「なんて不道徳なんだ!」と書けばよい。例えばこんな風に。

私がこの作品を読んで一番印象に残ったのは、ゴリオ爺さんの娘たちです。彼女たちはとても不道徳に見えます……だけど、今でもそのような人々は多いのではないでしょうか。例えば、最近のニュースでも……ということがありました。……バルザックが描きたかったものこそ……

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特定の登場人物の心情について考察する

上の派生形だが、行動というよりは「ある登場人物がどうしてこう思ったのか」に着目するという方法もある。

例:三島由紀夫金閣寺

かの有名な三島由紀夫『金閣寺』は、次のような文章で終わる。

生きようと私は思った。

――だったら、主人公は「なぜ生きようと思った」のか? というところに着目すればよい。

もし自由に課題図書を選べるなら、三島由紀夫作品は割と多義的な解釈ができる終わり方である作品が多く、読書感想文におすすめである。このブログでも『美しい星』などを取り上げているので、適宜参照いただきたい。

金閣寺 (新潮文庫)

金閣寺 (新潮文庫)

 

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なぜこの作品は「○○」というタイトルなのか?

まったくテーマを思いつかなかったときに使えるのが、 この切り口である。

ただし、ある程度特徴的なタイトルの本でないと当然ながら使えない。

例:カミュ『異邦人』

いわずと知れたカミュ『異邦人』。本も薄くて読みやすいので、おすすめの本である。この本なら、

「異邦人」とは何を表しているのか?

と書いていけばよい。

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例:遠藤周作『海と毒薬』 

遠藤周作『海と毒薬』なんかも、結構特徴的なタイトルなので「タイトルが表しているものは何か?」という論点で攻めやすい。

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社会の動きと関連付ける

読書感想文というのは、例えば大学受験で課されることもある小論文の予行演習のような意味もある。

だから、もちろん純粋にある作品の論点について突き詰めることができれば書く必要はないのだが、社会の動きと関連付けるというのが一つの切り口となる。

例:ジョージ・オーウェル1984年』

例えばオーウェル『1984年』などは、社会に警鐘を鳴らしているような作品である。

このような作品は、一般的な読書感想文にはならないかもしれないが、かなり「小論文」に近い形で書くことが可能である。書き方の流れの例としては、次のような感じだろうか。

私がこの作品を読んで考えるのは、最近の社会のについてです。私は最近の社会の……な風潮を憂慮しています。この作品で描かれた……のような出来事は、今まさに現実になってきているのではないかと思うのです。……だからこそ、私たちは……のように生きていくべきなのではないかと思うのです。

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例:安倍公房『砂の女

他にも、安倍公房の『砂の女』などは、新型コロナウイルスの自粛生活と関連付けて考察することができるのではないかと思う。

詳しくはこの記事で書いたので、一読して見てほしい。

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おわりに

テーマが決まったら、読書感想文はかけたも同然である。

あとは、

1.書き出し・テーマの提示

(例)私がこの本を読んで考えたのは、この本の〇〇についてである。

2.テーマの考察

(例)この〇〇という論点に注目するとき、私はこの本の~という場面が非常に大きな意味を持っていると考える。......

3.結論

(例)私は、この作品で筆者は〇〇というものを描くことで、□□という人間社会の~を表そうとしていたのではないかと考える。

(例)私は、この作品で筆者は□□を描くことに失敗していると考える。なぜなら......だからである。

――というような流れで、読書感想文を書くことができる。

 

もちろん、ちゃんと本を読みこまないと読書感想文というものは書けない。

だが、私がここで述べたかったのは、読書感想文はいかにテーマを決めるかが勝敗のカギであり、そして全く感動しなかった本についても、「考察する」という形でよい読書感想文を書くことできるということである。

タイトルで中高生向きと書いてはいるのは、この手法が少し難しいからというのと、あまり小学生に求められる読書感想文はできないからであるが、もちろん小学生だってこのような形で読書感想文を書いても良い。

ただ、言いたいのは、中高生が読書感想文を書かされるとき、求められているものは「感動した」ことではないのである。

 

ぜひ、がんばって読書感想文を書いてみてほしい。