不眠の子守唄

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帰国子女に劣等感を抱くな!総理通訳直伝の英語学習の心得ー中川浩一『総理通訳の外国語勉強法』書評・感想

中川浩一「総理通訳の外国語勉強法」を読んだので、感想を記す。 

総理通訳の外国語勉強法 (講談社現代新書)

総理通訳の外国語勉強法 (講談社現代新書)

 

本の概要

著者は外務省に勤め、アラビア語の通訳をしている方のようである。

著者はもともとアラビア語に造詣があるわけでは全くなく、24歳からアラビア語学習を始めた。しかし、それにもかかわらず4年目で公式の場での通訳を任されるようになり、8年目には総理大臣の通訳を任されるようになったという経験を持っている。

この本は、そのようなバックグラウンドを持った著者が、本気で外国語を話せるようになりたい人のための心構えを記している本である。

 

著者が今まで成し遂げてきた公的な仕事などについては、公務員として話すことができないからか、あまり多くは語られていない。Amazonのレビューでも評価が分かれているのが面白いが、たしかにこのような稀有な著者のバックグラウンドに期待して本を買った場合には期待外れに終わるかもしれない。

しかし、一人の総理通訳がどのような心持ちで外国語を習得するべきであると考えているのを知ることができる本としては良書だと思う。

 

この本の目次は以下の通りである。

第一章 総理通訳への苦難の道のり
第二章 外国語習得のエッセンス
第三章 「ネイティブ脳」より「日本語脳」
第四章 「インプット」より「アウトプット」
第五章 外国語習得の具体的メソッド
第六章 通訳のすすめ

特に気になった点について、紹介していきたい。

 

外国語の習得に「なぜ?」は不要

これは、本書を読んで私が一番なるほどと思ったことである。

 

英語を例にとろう。私はいわゆる古典的な英語教育を中学、高校・予備校で受けてきた経験を持っている。

その中で、英語の「なぜ?」という疑問を解決していくのは学問的に面白かったし、実際にその知識は学習に役に立ったと思ってはいる。

しかし、文法なんて後から理解した方が近道であるというのが著者のスタンスである。確かにこれもまた一理あるのかもしれない。

 

例えば、私にはこのような経験がある。

 

英語には「倒置」がある。例えば、「Not only did she kick me, but she hit me.」とか「Never did I expected to see her.」とか「Were I you, I would help him.」とか、あのスターウォーズの名台詞である「May the Force be with you.」いった文章である。簡単に言えば、感動や希望が込められているときに倒置が起こる。これらの文法を、私は受験生時代に学習し、理解した。

大学に入ってから、何人もの帰国子女に出会うことになった。そこで初めて彼らの書く英文に触れたのだが、その中に「倒置」を用いた文章があった。

私はある彼に「すごいな、こんなに自然に倒置をつかえるなんて」と言ったが、彼は私に対し「どこが倒置?」とクエスチョンマークを返すだけであった。

 

ああ、彼らは全く無意識に倒置を使っていたのか。

私は、帰国子女との間にある「壁」のようなものをここで感じた。

 

しかし、このような「壁」は、思い返してみれば自分が自分で創り出してしまったものに過ぎない

彼らも、私も、英語で「倒置」が起こるということは意識的か無意識的かの差はあれど、知識として持っていたことに変わりはない。単に学習方法が違っただけである。

帰国子女でなくとも、違う勉強法だったら私も倒置法を無意識的に使える「帰国子女側の人間」になっていた可能性はいくらでもある。

 

それが、この本の著者の言う「理由を解明しよう」とせずに「子供に戻った気持ち」で勉強するという勉強法なのである。

 

どちらが正しいと一概には言えないかもしれないが、「なぜ?」を考えず虚心坦懐に勉強するほうが、確かに筆者の言う通り近道なのかもしれない。

 

紹介しきれないが、確かにこのような心持ちは必要なのかもしれない、というエッセンスは他にもいろいろ含まれていた。

この本を生かしていくためには

当然ながら、この本を読んだだけでは外国語ができるようにならない

この本の著者は、著者は外務省の職員として留学に派遣され、ネイティヴにマンツーマンで教育される機会を得ている。そのような環境を持っているうえでの勉強法である。

しかし、普通の人々はそのような環境にはいない場合が多いだろう。

 

だが、英語なら、自分から求めていけばそのような環境はインターネット上などで得ることができる。自分でアウトプットした英文を、英文添削サービスなどにかければいいのである。

外国語を学習するための環境づくりは自分で行わなければいけないということは、自戒も込めながら言わなければならない。

総理通訳の外国語勉強法 (講談社現代新書)