不眠の子守唄

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「論理的思考」を超越した「直観」を獲得しろ!ー田坂広志「直観を磨く 深く考える七つの技法」書評・感想

田坂広志「直感を磨く 深く考える七つの技法」(講談社現代新書)を読んだので、概要と感想を記そうと思う。

直観を磨く 深く考える七つの技法 (講談社現代新書)

直観を磨く 深く考える七つの技法 (講談社現代新書)

 

これからの時代は「論理的思考」だけではない

この本が、他のいわゆる「思考力を鍛える」ための本と一線を画しているのは、その前提である。

いわゆる思考力に関する本は、その習得するべきものを「論理的思考」としている。

しかし、この本は「論理的思考」の上に立つ思考法を身に着けることを目標としているのである。

 

「論理的思考」は、色々な思考の前提となるものである。しかし、あくまで前提であって、基礎的なものであるというのが著者の意見である。

これからの時代は、なおさらそれが顕著である。

情報化社会が進むにつれ、「論理的思考」において、人間はコンピューターに決して敵わなくなっていくだろう。

そんな中で人間が価値を持ち続けるためには、論理的思考だけではいけないのである。

 

さらに、著者は論理的思考のみではいけない理由として、次のように述べる。

すなわち、物事は「簡単な因果律」で考えてはいけないのである。

 

この言葉の意味に深い説明は不要だろう。直線的な論理で物事を捉える時代は終わったのである。

 

だからこそ、大局観が求められるのである。

では、具体的にはどのような「直観」が必要なのか?

そして、どのような考え方が求められるのか。

 

筆者は、これにつながる興味深い方法を提示する。

 

自分の中に他者を作り出す

話を少し脱線させるが、この本の帯を見てほしい。

直観を磨く 深く考える七つの技法 (講談社現代新書)

この本の帯では、二人の人物が向かい合っているが、もちろんこの「二人」はどちらも著者の田坂広志氏である。

なんとも奇妙な帯であるが、このように「もう一人の自分に向き合う」ことこそが、著者の提唱する「直観を磨く」方法なのである。

 

すなわち、いわゆる二重人格・多重人格を作るのである。

 

「もう一人の自分」に向き合うことには、色々な効用がある。

もう一人の自分を獲得することで客観性を得て、視野狭窄になるのを防ぐこともできる。

 

そして、著者はもう一人の「賢明な自分」と向き合うことで、自分の限界を超えた能力を発揮できると説くのである。

 

さらに筆者は、「直観を得る」のに活用できる、驚くべき仮説としてゼロ・ポイント・フィールド仮説を提示する

ゼロ・ポイント・フィールド仮説とは

筆者の紹介するゼロ・ポイント・フィールド仮説について、少し紹介したい。

 

不十分であると思うが、私の理解では、この仮説はいわゆるアカシック・レコードのようなものである。

SFの傑作であるカート・ヴォネガットタイタンの妖女」に登場する、「時間等曲率漏斗」(クロノ・シンクラスティック・インファンディブラム)に近いものであると思った。

moriishi-s.hatenablog.com

 

例えば光などは波動であるが、減衰してしまう。

しかし、世の中には「減衰しない波動」の存在もありうる。このような波動によって、過去に起こったことはすべて記録されているのではないか、というのが仮説である。

そして、その記録と我々はシンクロできる。シンクロした時にこそ、直観は降りてくるのである。

 

量子力学に通暁した筆者によりこのようなものが決して荒唐無稽ではないという説明を受けることができたのは興味深い。

 

そして、そのようにシンクロするためにはどうするべきかが本書では書かれている。

自分の中の他者との会話

 

個人的な感想であるが、ややオカルティックに思える部分もあると感じたもの、自己啓発書としてかなり面白い部類に属するのではないかと思う。

 

「自分の中の他者」を作り出すことには漠然とした怖さもあるが、確かに有益なことではあるのだろう。

 

個人的には、次のように考えた。

我々は何か重要な判断をするときに、その判断を正当化する理由を探してしまう。そして、その理由を正当化するために多くの時間をかけ、迅速果断な判断を下せずじまいになってしまうことも多い。

そのような正当化の営みという無駄な行為を省くことこそが、自分の中に「賢明な自分」を置くことなのではないかと思った。

 

もう一つ、この本を読んで思ったのは、「ブログを書く」というのも、ある意味ではもう一人の自分との対話ということである。私自身も、思考を整理するためにブログをできれば継続的に書いていきたいと考えている。

直観を磨く 深く考える七つの技法 (講談社現代新書)