夭逝したミュージシャン
「27クラブ」という言葉がある。
――このクラブの「会員」は、27歳で死亡したポピュラー音楽のミュージシャンたちである。ニルヴァーナのカート・コベイン(カート・コバーン)やジャニス・ジョプリンなどが主要メンバーである。
彼らの存在から、欧米ではミュージシャンは27歳で死亡することが多いと、まことしやかに言われている。
27歳で人生を終えてしまうほど、ミュージシャンというものは濃厚な人生を歩み、苦悩に喘ぎ、時には快楽におぼれ、燃え尽きてしまうということなのだろうか。
しかし「27クラブ」にも上には上(?)がいて、もっと若くして亡くなっていながら、彼らに勝るとも劣らない名声を残しているミュージシャンもいる。
――その代表格が、イアン・カーティス(1956年7月15日~1980年5月18日)ではないかと思う。今日は、イアンが亡くなってからちょうど40年の節目の日である。
Joy Divisionというバンド
イアン・カーティスというのは、Joy Division(ジョイ・ディヴィジョン)のボーカルを務めた人物である。
聴いたことがない方には、まず遺作にして代表曲、Love Will Tear Us Apartを聴いてほしい。
Joy Division - Love Will Tear Us Apart [OFFICIAL MUSIC VIDEO]
この曲を聴いて、かなり「変な曲」だと思われた方も多いかもしれない。無機質なドラムや上手いとは言いがたいギター。
そして、イアン・カーティスの重いバリトンボイス。
彼のボーカルも技術的には決して上手くないのだろうが、不思議と演奏に調和をもたらしている。
イアン・カーティスの歌詞
しかし、一番特徴的なのは、やはり歌詞の暗さなのだと思う。
先ほど紹介した「Love Will Tear Us Apart」では、表題の通り
愛がまた私たちを切り裂く
と歌われる曲である。
他に私が個人的に一番好きな曲である「The Eternal」という曲は、最も暗い曲の一つとされるが、次のような歌詞がある。
人と心を通わせることを、呪いのように受け止めてしまっていた
どうしたらこのような歌詞が書けるのか不思議に思うほどである。ものすごい名言だと思う。
このような歌詞には、彼の精神が表れている。
イアン・カーティスという人物
イアン・カーティスという人物は、非常に両面的であったと言われている。
彼は公務員として障碍者のための職業安定所で働き、安定した生活をする一方、ハードな音楽活動をこなしていた(障害や病気を持った人々との触れ合いは、彼の歌詞にも大きな影響を与えている)。
イアンはロックスターとしての野心とプレッシャーの狭間や、妻と愛人との三角関係、そして持病のてんかんや鬱とハードなスケジュールに苦しんでいた。
(イアン・カーティスと言えば、見ているものを不安にさせるダンス(?)も有名である。この不思議なダンスは、てんかんの前駆症状だといわれている)
Joy Division - Transmission [OFFICIAL MUSIC VIDEO]
そのような両面性が、彼を苦しませた。
そして、彼は遺作となったJoy Divisionの2ndアルバム「Closer」の発売間際に、自ら命を絶った。
英語の「Closer」には「クローサー」(もっと近くに)と「クローザー」(終わらせるもの)の二通りの意味がある。
――ふつう日本では「クローサー」と呼ばれているが、ダブルミーニングなのである。
生前のイアン・カーティスは、どのような意図でこの題を付けたのだろうか? 想像は尽きない。
おわりに
私もイアン・カーティスがJoy Divisionの1stアルバムであるUnknown Pleasuresを書いた年より年上になってしまった。
しかし、彼と比べてどれくらい濃密な人生を歩んできたのだろうかと思うのである。
イアン・カーティスのようになりたい、というわけではない。しかし、やはり彼のような生き方にどこか憧れ、感化されてしまうのである。
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