不眠の子守唄

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シャーロット・ブロンテ『ジェーン・エア』考察ー描いているのは、「女性の自立」か「弱者の差別」か?

ジェーン・エアといえば、古典的・典型的なシンデレラ・ストーリーと思われている人も多いだろう。

それは一面では誤りではないのだろうが、この古典的名作をそのように表層的にしか読まないというのには個人的には反対である。ジェーン・エア』は、作品が書かれた当初にどのような意義があり、また現代においてはどのように読むべきなのかを主体的に考える価値がある作品だと思うからである。

(なお岩波文庫ではジェイン・エアだが、この記事ではジェーンに統一する)

ジェイン・エア(上) (岩波文庫)

ジェーン・エア」あらすじ

別記事に分けました。

moriishi-s.hatenablog.com

 

ジェーン・エア」考察

「女性の自立」の物語としてー同時代的観点からー

ジェーン・エアが現代でも読み継がれている理由は、それが歴史上の「女性の自立」における金字塔的作品だからであろう。

 

作者シャーロット・ブロンテは女性であるが、当時この『ジェーン・エア』を「カラー・ベル」という筆名(男性とも女性ともとれる)で書いていた

18世紀のイギリスでは、女性には文学は書けないという偏見が根強かったからである。だが、『ジェーン・エア』は大評判を呼ぶことになり、結果として「女性に長編小説は書けない」という観念が誤りであることを証明したのである。

ジェーン・エアという女性

ジェーン・エア』は、作者シャーロット・ブロンテの人生を大きく投影した作品である。

シャーロット・ブロンテ自身が「女性の地位向上」の象徴的な人物であるがゆえに、主人公ジェーン・エアも「自立した女性」である。あらすじにもジェーンの幼少期の台詞をいんようしたが、たしかに「かわいくない」と思わせるほどである。また、成長してからのジェーンは、学問をたのみに職業選択の自由も持つ。

 

そして何よりは最終的に、ジェーンは「自由恋愛」によってロチェスターと結ばれることだろう。

 

これが当たり前ではないという時代に、このような作品が書かれたということに、『ジェーン・エア』という作品の不朽の価値がある。

 

また、作中でジェーンは、決して美人ではないと書かれる。容姿によってシンデレラ・ストーリーを駆け上がるのではなく、実力と意志の強さが重視される。

 

これは、この作品が今なお支持を集める理由なのではないか。

「バーサ・メイスンの死」という「暗部」ー現代的観点からー

ここからは現代的な価値観から考察をしていきたい。実は、ジェーン・エア」は、現代の価値観からは批判される点も多い

 

その最たる部分は、バーサ・メイスンが死ぬことによってジェーンとロチェスターの結婚が可能となるというところであろう(あらすじをご参照のこと)。

バーサは、現代でいうところの統合失調症患者であり、また植民地出身の女性である。

 

ここに、障害者差別・人種差別的な観念を感じざるを得ず、読後感に引っ掛かりを覚える人は多いだろう。

 

この部分は、私は「適切ではない」と思う。だが、批判的に読める小説であっても、そこには価値があるのである。むしろそのように主体的に読める小説だからこそ、価値があるといっても詭弁ではないだろう。

「ジェーンの闇の分身」としてのバーサ

この「バーサ」の問題は、19世紀中葉以降多くの人々の関心を集めてきた。

 

屋根裏の狂女』という評論では、バーサはジェーンの「闇の分身」とされている。すなわち、自立した女性としてのジェーンの対照的立場である、抑圧された旧時代的な女性の象徴が、バーサであるというのである。

さらに関連して、『サルガッソーの広い海』という作品もある。

この作品は、バーサを主人公とした二次創作である。現代的な観点から、バーサを不条理に抑圧された女性として描き出す、非常に面白い作品である。

おわりに

 

色々な意見があるが、ジェーン・エアは文学的に優れた作品だと思う。神は、ブロンテ姉妹に才能を与えた代わりに寿命は与えなかったのだとつくづく考える。

あざやかな情熱と愛が、そこにはある。

 

ここには現代的観点からの批判も書いたが、現代でも批判がなされるということは逆説的にこの作品の価値の高さを示している。『ジェーン・エア』が古典の一般教養として受け入れられているからこそ、『サルガッソーの広い海』も生まれるのだ。

 

ジェーン・エア』は現代の社会にも問題提起をし続ける、人生を豊かにする、読む価値のある作品であることに疑いの余地はない

ジェイン・エア(上) (岩波文庫)

ジェイン・エア(上) (岩波文庫)

 
ジェイン・エア(下) (岩波文庫)

ジェイン・エア(下) (岩波文庫)

 

嵐が丘』は、シャーロットの妹エミリー・ブロンテの作。『ジェーン・エア』に比べると難解だが、それゆえ文学的評価や熱狂的ファンの多さではことらが勝っているような気がする。

嵐が丘(上) (岩波文庫)

嵐が丘(上) (岩波文庫)

 

▼『ジェーン・エア』は少なくとも4回は映画化されているようである。

ジェーン・エア (字幕版)

ジェーン・エア (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video