不眠の子守唄

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現代の歴史は25年周期?「歴史曲線」とは?ー吉見俊哉『大予言ー「歴史の尺度」が示す未来ー』レビュー・感想

吉見俊哉『大予言ー「歴史の尺度」が示す未来ー』を読んだ。

簡単に言えば、本書は「歴史の尺度」というものを考え、そして歴史を周期的に見る試みである(ただ、歴史に法則性を求めているわけではないということは付言しておく)。

歴史の波というものを観察しながら、その本質を観照すること。そして、将来的に起こる可能性があることに備えるのが本書の目的である。

以下、本書の内容について紹介していきたい。

大予言 「歴史の尺度」が示す未来 (集英社新書)

本書の内容

本書の構成

本書の章構成は、以下の通りである。

序章 歴史のメガネをかける

第一章 二五年単位説――一八四五年から二〇二〇年まで

第二章 世代間隔と人口転換――二五年単位説の人口学的理解

第三章 長期波動と資本主義――経済循環から眺める世界史

第四章 五〇〇年単位説――近代の「入口」と「出口」

第五章 二五年後の未来 長い一世紀後の未来――未来の尺度

終章 世代史と世界史をつなぐ

第1章は、第2章をはじめとする本書の基本的テーゼとなる「25年周期説」を帰納的に例証するもの。第1章はこの本の真髄ではないので、つまらなかったとしても我慢するか、本を捨てずに第2章以降に行くことを勧める

本書の究極目的とは?

本書の究極目的は、「近代歴史曲線」を導出し、未来を予言することにある。

 

そのために、歴史を見る上での「いくつかの尺度」(=いくつかの「歴史の波」)を見ていく。

そして、そのような波動を合成することによって「近代歴史曲線」を導出する。

「近代歴史曲線」の要素とは

では、その「近代歴史曲線」を形作るものとは何なのだろうか?

要素は、3つ提示される。

要素1:コンドラチェフの波

一つ目には、コンドラチェフの波である。50年程度の周期の景気の起伏の波である。

 

政治経済を学んだ方ならご存知だろうが、この波の理由の一つは、設備の耐用年数である

1964年東京オリンピックに合わせて作られたインフラの老朽化が進み、建て替えが行われているというのは、例としてわかりやすい。

 

吉見は、この「コンドラチェフの波」を、一つ目の波とする。

要素2:バクトゥリアン関数

2つ目は、「バクトゥリアン関数」である。バクトリアンとは、「フタコブラクダ」のことだという。

 

これは、15~17世紀の「上昇」、17~18世紀の「停滞」、18~20世紀中葉までの「上昇」、それ以降の「停滞」という「二つのコブ」を語源にするもので、吉見の造語である。

これを、吉見は本書を通じて例証する。

要素3:ロジスティック関数

最後の「ロジスティック関数」は、1838年に数学者P=F=フェルフルストによって提唱されたものである。

マルサスの「人口論」を背景とする、生物の増え方の関数である。

人口論 (光文社古典新訳文庫)

人口論 (光文社古典新訳文庫)

 

すなわち、人類の人口の発展は今まで続いてきたが、頭打ちになったというものである。

「近代歴史曲線」のまとめ

以上の関数について歴史的に例証するのが本書である。その形がどうなるかは本書で確認していただきたいが、お察しの通り21世紀は低迷期を迎えるというのが予測である

 

歴史を学習する意味は多くあるが、一つには、歴史から未来を予測する事であろう。本書は、そのような目的に特化した本である。

(吉見は歴史学者というよりも社会学者であるが)

 

もちろん、この本の予言した通りに必ず歴史が進行するとは思わない。

 

だが、これからの時代を生きる上の、一つの心構えになるのではないかと思う。

おわりに

最後まで特に言及しなかったが、この本は集英社新書の中では字が小さめでページ数も多い。

テーマ自体は新書でありながら、引用文献の幅などは単行本並みの奥行きを持っている。ここに、吉見俊哉という名の通った学者の書いた新書を読む意味がある。

 

例えば、引用されている、エマニュエル・トッドの『世界の多様性』は面白かった。

曰く、19世紀のフランスからドイツへの覇権の移行は、女性の(識字率の上昇に伴う)出産年齢の上昇が起因している、などの説である。

世界の多様性 家族構造と近代性

世界の多様性 家族構造と近代性

 

エマニュエル・トッドの著作をしっかりと読んでみようと決意できたのは、本書を読んだ副次的な収穫だった。

 

このような発見があるからこそ、しっかりとした作りの本を読むのは面白いのだ。

大予言 「歴史の尺度」が示す未来 (集英社新書)

大予言 「歴史の尺度」が示す未来 (集英社新書)

  • 作者:吉見 俊哉
  • 発売日: 2017/04/14
  • メディア: 新書