不眠の子守唄

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江口寿史『ストップ!! ひばりくん!』という漫画が、史上最高のラブコメディである理由

好きなマンガを10個挙げろと言われたら、絶対に入れる作品がいくつかある。
そのうちの一つが、この江口寿史先生の『ストップ!!ひばりくん!』である。 
 
まずジャンルとして、マンガではラブコメディが割と好きなのだが、その中でストップ!!  ひばりくん!』は最高のラブコメディであると私は信じているである。だから、どう選ぼうとしても絶対に『ストップ!!ひばりくん!』は私の中で上位にランクインするというわけである。
この記事では私がこの作品を愛し、史上最高のラブコメディである理由を紹介したい。

ストップ!!ひばりくん!コンプリート・エディション 第1巻

『ストップひばりくん』作品概要

作品名:「ストップ!! ひばりくん!」
作者:江口寿史
連載期間:1981年~1983年
連載誌:週刊少年ジャンプ

「古い!」と思った方も、いるだろう。
たしかにもはや40年近く前の作品なのだが、それを理由に侮らないでほしい。最後までお付き合いいただきたい。

『ストップひばりくん』あらすじ

母を亡くした主人公、坂本耕作は、母の知り合いという謎のおじさん「大空いばり」の家に下宿することになったが...
 
「大空家」は、ヤクザの一家だった!?
 
逃亡しようとする耕作だったが、この家で「美少女」を見かけたことから、逃げるのを思いとどまる。
 
しかし、この「美少女」こそ、大空家の「長男」大空ひばりだったのである...
 
耕作とひばりは同学年で、同じ高校に通うことになる。外では「女」として通しているひばりに、耕作の学園生活は振り回されることになっていくのである...

『ストップひばりくん』登場人物

ストップ!!ひばりくん!コンプリート・エディション 第3巻

メインキャラクター

  • 坂本耕作(上の画像の左)…主人公。若葉学園に通う高校生(1年生→2年生)。ボクシング部に入部。
  • 大空ひばり(同右)…ヒロイン?主人公? 生物学的性は男だが、性自認は女、性指向も男(=恋愛対象は男性)。弱小ヤクザ「大空組」の一人息子で、若葉学園に通っている(耕作と同い年)。
大空組の人々
  • 大空いばり…大空組組長。
  • 大空つぐみ…長女。
  • 大空つばめ…次女。ひばり、耕作の二学年上。若葉高校の高校生から大学生に。姉妹の中で女性としてふるまうひばりのことを一番苦々しく思っている。
  • 大空すずめ…三女。小学生。
  • サブ・政二…組の若頭たち。
若葉学園の生徒
  • 椎名…耕作、ひばりのクラスメイトで、ボクシング部。ひばりによくアタックしている。
  • 理絵…ボクシング部マネージャー。椎名のことが好き。
その他
  • 「白いワニ」…原稿に追われた作者の見た幻覚(「白い原稿」の暗喩)。メタフィクション的要素。

 

「ひばりくん」の魅力

このマンガの登場人物はそれぞれ魅力的なキャラクターたちなのだが、このマンガを唯一無二の物に仕立て上げているのは、やはりヒロイン「大空ひばり」である。

 

ひばりくんは、ひたすらかわいいのである。

ストップ!!ひばりくん!コンプリート・エディション 第2巻

主人公の耕作は、ひばりが男だとわかっていながら、その可愛さに惑わされていく。読者も同じ感情を味わっていくことになる。

『ストップひばりくん』が最高のラブコメディである理由

これは個人的な意見なのだが、基本的に優れた「ラブコメディ」というのは、どこかにロミオとジュリエット的要素」が含まれていなければならない

すなわち、「ラブコメディ」を演じる両者の間には「禁じられた関係」や「二人を引き離す何か」が存在しなければならない

 

このような「障壁」が存在しないなら、さっさと付き合っちゃえよ~となるだけだからである。

 

その点、『ストップひばりくん』は、完璧な「ロミオとジュリエット」的な要素を含んでいる

耕作とひばりの完璧な「禁じられた関係」

生物学的には「男性同士」という「禁じられた関係」への誘惑こそが、このマンガの肝なのである。

 

ここまでの説明は、LGBTなどの方々への配慮を欠いていた発言かもしれず、もしそうであれば謝罪したい。

 

しかし、このマンガは1980年代の作品であり、LGBTなどの問題を提起しようとしたものではない。
本来「ヒロインが男」という設定は、単調な「ラブコメディ」へのアンチテーゼとしての「ギャグ漫画」要素として持ち込まれたものであった。
しかし、それゆえ皮肉にもこの作品は完璧なラブコメディになってしまった。
 
現代ではこの設定を「ギャグ」として作品化することは、ポリティカルコレクトネスの観点から実現しにくいだろう。
そのような設定にはたしかに「古さ」を感じざるを得ないものの、「現代なら不適切かもしれない」という点は、読者が補っていけばよい。
 
この作品は「男同士のカップルはハッピーエンドを迎えることができない」という当時の価値観を反映し、「禁じられた関係」を完璧に演出しているのである。
 
ある意味において、この作品は「現代作品では不可能な境地」を踏破しているともいえるのである。

他作品への影響 

ヒロインが女性装をした「男の娘」であるという作品は、現代なら一部で市民権を得ているものの、その最初の例はこの作品ではないかと言われることもある。
 
ある意味、マンガ史・サブカルチャー史においても重要な役割を果たしているのがこの作品なのである。
 
やや推測が入り込むが「ストップひばりくん」は、その知名度以上にいろいろなマンガに影響を与えている作品なのではないかと思う。
 
ここまで特に言及してこなかったが、大空家は「ヤクザ」である。道場なんかもある家である。
そもそもこの設定自体がマンガの面白さを約束しているようなものであるが、さらに大空家には(ひばりを除いて)美人三姉妹がいて、それぞれいい役を担っている。
高橋留美子の超有名作『らんま1/2』の舞台である天道家は、ヤクザではないものの「道場」がある家であり、天童家には美人三姉妹がいるなど、共通点が多い。
 
「ストップひばりくん」は、『らんま1/2』にも少なからず影響を与えている作品なのではないか、と思うこともある。

瑣末な点だが、
『神のみぞ知るセカイ』Flag.141に出てくる男も「ストップひばりくん」のオマージュではないかと思う。

絵のきれいさ

古いマンガを読むことへの抵抗の大部分は、その絵柄の古さにあると思う。
しかし、この『ストップひばりくん』の絵柄は、30年以上前の作品とは思えないほど美麗である
 
作者の江口寿史さんは、今でもイラストレーターとして活躍されていて、その画力は折り紙付きである。
Twitterもなさっていて、今のお仕事ぶりを拝見することができる。
 
先ほどは「ストップひばりくん」の他のマンガへの影響について紹介したが、絵柄のきれいさが与えた影響も、間違いなくこのマンガの果たした功績である。

おわりに

『ストップひばりくん』は、長らく完結していない作品だったが、「コンプリート・エディション」によって一応完結した。

 

『ストップひばりくん』はいくつかのバージョンがあるが、読むなら下に記した「コンプリート・エディション」(全三巻)がおすすめである

無料で全巻試し読み可能

そして、特筆すべきは、三巻全てが「Kindle Unlimited」で読めることである(記事投稿現在)。記事投稿現在初月無料なので、実質無料で試し読みできることになる。

 

KindleスマホやPCのアプリでも読むことができるので、体験したことがない方は一度試してみてはいかがだろうか。広告がない分、スマホのマンガアプリ以上の快適さで読むことができる

『ストップ!!ひばりくん!』は連載していた集英社のマンガアプリ(ジャンプ+(ジャンプラ))では今のところ配信されていないようだが、Kindle Unlimitedで補って余りある。

このサービスもあわせてお薦めしたい。

 

▼コンプリートエディションの全三巻

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