不眠の子守唄

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カート・ヴォネガット『タイタンの妖女』あらすじー人類の究極目的と自由意志とは何か?

タイタンの妖女」あらすじ

記事が長くなりすぎたので、あらすじを別に分けます。

ネタバレありですが、登場人物を絞ったプロットを書いています。

 

▼普通の感想はこちらから

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主人公は、マラカイ・コンスタントというアメリカ一の大富豪である。彼は、父の代から続く幸運によって、わずか二代で莫大な富を獲得した人物であった。

 

彼は、とあるウィンストン・ナイルズ・ラムフォードという人物に招待され、彼に会いに行くことになる。

 

ラムフォード氏はかつて億万長者として、自身で宇宙船を建造し、愛犬カザックとともに宇宙旅行へと飛び出した人物である。

だが、彼は宇宙旅行の最中に「時間等極率漏斗(クロノ・シンクラスティック・インファンディブラム)」と呼ばれる特異点に囚われてしまう

この「クロノ・シンクラスティック・インファンディブラム」については、作中では子供向けの解説しか出てこないが、その機能は次のようなものである。

 

この「漏斗」のある場所には、過去・現在・未来のあらゆる真理が波動として記録されている。この波動は、太陽からベテルギウスに至る一本のらせん状の形をとっている。ラムフォード氏は、それと一体化してしまったのである。

その結果、ラムフォード氏は「波動現象」と化してしまった一方で、未来・過去を知る能力を身に着けることとなる。

 

ラムフォード氏は「らせん型」が地球の位置と一致する際のみ、地球に姿を現すのである。

 

ここで、マラカイ・コンスタントは、ラムフォードから「不愉快な予言」を受けることになる。マラカイ・コンスタントは、この不愉快な予言に絶望し、それが成就しないことを祈りながら酒に浸る。しかし、それが裏目に出て、またついに運にも見放されたことから、マラカイ・コンスタントはラムフォードの予言通り凋落の路を辿る。

 

そんな状況の中、再起を図る彼に歩み寄る影があった。マラカイ・コンスタントは、火星へと誘拐され、火星陸軍の軍人として生きていくことになる。

 

さらに、マラカイ・コンスタントは反抗的な態度をとったこともあって、記憶を何度も抹消されることとなった。そして、彼は「アンク」として火星軍に管理された新たな人生を歩み始める。

 

 

 

火星軍は、地球の侵略を目標とする軍隊である。だが、誰がなぜ地球を侵略するために火星軍を組織したのかは、知る者はいない。

読者なら黒幕を知っている。当然、ラムフォードである。

しかし、彼はなぜ生まれ故郷の地球を攻撃するのか

 

いよいよ火星軍によって地球が侵略される。

しかし、火星軍は地球によってあっさりと倒される。火星軍は旧時代の軍備しか備えていなかったのだから当然である。

ラムフォードは、火星軍を、地球を団結させるために利用したのである。

 

地球の人々は、火星人の襲来という危機を乗り越えて団結した。

また、本来地球人であった、無力な火星人を逆に虐殺してしまったという悔悟の念は、地球人を一つにした。

 

ここに、ラムフォードは新たな宗教の神として君臨する。

 

ここで、アンクことコンスタントは何をしていたのか、という話になる。実は、アンクは火星軍の地球襲撃に参加するも、なぜか水星へと行く羽目になってしまう。彼は水星で何年かを過ごす。

そして、水星での生活を経て、地球へと帰還する。

アンクの着いた地球は、前述のようにラムフォードによる新しい宗教が支配していた。

 

アンクは、ラムフォードに謁見する。そこでラムフォードから、アンクはマラカイ・コンスタントであるということが告げられる

マラカイ・コンスタントとは、新しい宗教が一番の罪人と断罪する存在である。

 

かくして、アンクは流刑として、土星の衛星タイタンへと飛ばされる。

 

タイタンには、サロというトラファマドール星人(実際はロボット)がいた。サロは、宇宙船が故障し、ある部品を紛失したことから、15万年近い足止めをタイタンでくらっていた。

 

ここで読者は知るのである。今までの人類の営みの究極目的とは、サロのいるタイタンに、この部品を届けに行くことなのであった

すなわち、マラカイ・コンスタントらがタイタンへと到着したことで、人類の今までの目標は達成されたのである。

 

ラムフォードも、トラファマドール星人に利用されただけだった。結局のところ、彼が火星と地球の戦争を起こしたのも、織り込み済みのことだったのである。

物語終盤、ラムフォードは、太陽の異常によって「漏斗」のらせんが吹き飛ばされたことによって、太陽系から飛ばされてしまう。

だが、ラムフォードはどこかで存在し続けるのである... ラムフォードこそ最大の悲運の持ち主であったのである。

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