不眠の子守唄

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若木民喜『神のみぞ知るセカイ』の魅力ー「ゲーマー」の逆説的に描く現実讃歌

若木民喜神のみぞ知るセカイ」という漫画がある。

ブコメディの全ての魅力を備えたような作品で、非常に好きな作品である。

 

今回は、このマンガの魅力を極力ネタバレしないよう紹介したい(少しはネタバレしてしまうので、絶対にネタバレが嫌な方はお気を付けを)。

神のみぞ知るセカイ(1) (少年サンデーコミックス)

神のみぞ知るセカイ」あらすじ

まずこのマンガの魅力を紹介するために、その設定とあらすじを軽く説明したい。

神のみぞ知るセカイ」設定

神のみぞ知るセカイ」の主人公は、「ギャルゲーマー」の世界に「神」のごとく君臨する「桂木桂馬」という男子高校生である。彼にとって、二次元の女子を攻略するなら朝飯前なのであるが、三次元の女性はそうはいかない。

 

そんな中、桂馬のもとに、とある女性を攻略してほしいという挑発的なメールが届く。二つ返事で返事をした桂馬だったが、これが運の尽き(というか物語の始まり)だった。

桂馬は「駆け魂狩り」のための地獄の契約をさせられてしまったのである

 

契約者である悪魔・エルシィの言うことには、今の人間界には「駆け魂」という悪霊のようなものが、脱走してしまっているという。それを捕まえるのがエルシィらの仕事だという。

では、駆け魂」はどこにいるのか? 答えは、若い女性の「心のスキマ」である若い女性の心に巣くうことで、駆け魂は赤子に転生しようとしているというのである。

 

その、女性の心のスキマに巣くう「駆け魂」は、エルシィの持つセンサーで見つけることができるが、捕まえることはできない。ではどうすれば、駆け魂を宿主の女性から出すことができるのか...... というところで、桂馬の出番となるのである。

 

▼(左)桂木桂馬、(右)エルシィ 

神のみぞ知るセカイ(26) (少年サンデーコミックス)

駆け魂を宿主の体から出し、捕まえるには、宿主の女性の「心のスキマ」を埋めれば良いのである

では、どうすれば「心のスキマ」を埋められるのか? ......一つの答えは、恋愛である。恋愛によって女性の心が満たされたとき、彼女の体の中に駆け魂はとどまっていることができなくなるのである。

 

桂馬は、三次元の女性を攻略しなければならなくなる。

 

こうして、次々と三次元の女性を攻略していくのが、「攻略編」である。

神のみぞ知るセカイ」あらすじ

神のみぞ知るセカイ」は、三部構成に分けられる。

第一部 攻略編

第一部が、先ほどまで紹介していた「攻略編」である。

 

駆け魂」に憑かれている女性を「恋愛」によって「攻略」することが、この部の目標である。

 

この辺りは、一話完結ものの短編でありながら、だんだん話が進んでいくという展開であり、非常にテンポがよく読みやすい

 

しかし、だんだんと「駆け魂」が人間界にはびこってしまった理由を、桂馬たちは知ることになる。

そして「駆け魂」の害もだんだんと大きくなっていき、再び「駆け魂」を封印する方法を桂馬たちは模索し始めるのである。

第二部 女神編

ネタバレになってしまうので、後日別記事にしようと思う。

第三部 過去編 

ネタバレになってしまうので、後日別記事にしようと思う。

神のみぞ知るセカイ」ストーリーの魅力

魅力的なヒロインの配置

まずは、ヒロインが魅力的であることはこの作品の魅力的である。

絵も私は非常にうまいと思う。

 

▼メインヒロイン?・エルシィ

神のみぞ知るセカイ(11) (少年サンデーコミックス)

▼サブヒロイン?・ハクア。エルシィの友人の悪魔

神のみぞ知るセカイ(12) (少年サンデーコミックス)

 

そして、画像を掲載しなかったが、「攻略対象」となる女性も、皆魅力的である。

 

しかし、この作品は単純な「ハーレムもの」には成り下がらないところに構成の巧みさがある

第一部では、攻略後に攻略された側の女性の記憶は消える。桂馬は、「らんま1/2」のらんまのように複数の女性に追いかけ回されたりなんかはしない。淡々と女性を攻略していくのが第一部と言えるかもしれない。あくまで、その時その時に注力しているヒロインは一人なのである。

 

第二部では少し趣向が変わるが、それでも「ハーレムもの」にはならない。桂馬の攻略にはあくまで「使命」が存在している。必ずしも桂馬が自分の心に素直になれないもどかしさには、ラブコメの悲哀も感じられるのである。

主人公・桂木桂馬の成長譚としての「神のみぞ知るセカイ

この作品の魅力の一つは、主人公・桂木桂馬という人間の成長にあると思う。

 

桂木桂馬

神のみぞ知るセカイ(2) (少年サンデーコミックス)

 

先述の通り、桂馬は二次元の世界に生きているゲーマーである。

だが、彼がいかに現実世界とのつながりを持っていくことができるようになるか、どのようにして彼が現実世界も捨てたものでないと思えるようになるかが、この作品のテーマでもあるのではないか

神のみぞ知るセカイ」という作品の魅力

作者・若木民喜先生は何者か

作品の魅力と作者の魅力は非常に近接的な関係にある

作者・若木民喜先生のWikipediaを引くと、非常に面白い経歴が書いてある。

21歳の大学生の頃に第33回小学館新人コミック大賞に『光陽高校合戦絵巻』を投稿し入選を獲得。そして編集者との打ち合わせで新しいネームも最初の数本は評価されていたが、その後に描いたネームで初めての厳しい批判に出会いショックを受けて以降は編集からの電話も取らず連絡を断った。1997年に京都大学文学部美学美術史学専修を卒業後、無職のまま実家でゲームをしている引き篭もり生活を5年程続けたが、26歳で再起を図って再び小学館新人コミック賞に応募したところ名前を覚えていた担当から連絡を受け、自分を奮起させるため27歳で東京に上京して武村勇治のアシスタントを経験。しかし30間近という危機感を持ちつつも、アシスタントの仕事を終えて自室に帰ればゲームで遊び、半年に一度程度の頻度で担当と話した時のみやる気を出して自分の漫画に取りかかるという生活を2年程送る。

若木民喜先生が京大卒のインテリであるのにも注目だが、失礼ながら30歳手前までなかなか自堕落な生活を送られていたことの方が驚きである。

しかし、「神のみぞ知るセカイ」を読めば、若木民喜先生のその時間は決して無駄ではなかったのだとわかる。

若木先生からは、勝手に生きる勇気をもらってしまっている。先生にとって、ゲームをする時間は無駄ではなかった。サブカルチャーの上に成り立っている優れたマンガ作品として、この作品は代表格ではないかと思うのである。

散りばめられたオマージュ

私はギャルゲーにはあまり精通していないのでわからないが、この作品はギャルゲーをはじめとした多くのゲームや作品という経験の上に成り立っているのではないかと思う。

他のマンガへのオマージュも、随所で見ることができる。

 

神のみぞ知るセカイ」にオマージュとして登場する(と思われる)作品としては、以下の記事でも紹介した「ストップ!! ひばりくん!」など、数多くのマンガが挙げられる。

作品を楽しむ一つの方法として、作中に散りばめられたオマージュやパロディを探してみてほしい。

 

神のみぞ知るセカイ」を無料で読むには

神のみぞ知るセカイ」は、こちらの記事でも紹介した小学館の「サンデーうぇぶり」というアプリで、根気強く毎日ポイントをためるなどすれば実質無料で全巻読むことができる(記事投稿現在)。

おわりに

神のみぞ知るセカイ」は非常に魅力的なマンガでありぜひお薦めするが、まずは試し読みからしてみてはいかがだろうか?